蛸薬師堂 病気平癒

　昔、この寺に善光という僧が住み、病気の母親の看病をしていました。
　ある日母親が、「大好物のタコを食べれば治るかもしれない」というので、僧侶の身で生魚を買うことは禁を犯すことになり躊躇しましたが、病床の母のことを考えタコを購入。箱に入れてそっと持ち帰ることにしました。しかしその姿を人々に見咎められ、門前で箱の中も見せるよう迫られた善行は、「このタコは病床の母が良くなることを願って買ったものです。どうかお助けください。」と一心に薬師如来さまに祈り箱を開けると、なんとタコは光り輝く薬師経八巻に変わっていました。この光景を見た人々は驚いて皆合掌し、「南無薬師如来」と称えると、経典は再びタコになり、跳ねて門前にあった池に入り、瑠璃光を放って善光の母を照らすと母の病気はたちまち回復しました。以来「蛸薬師」と呼ばれ、病気平癒、特におでき、ガンの平癒にご利益があるといわれ信仰を集めています。

　蛸薬師堂には、左手で撫でると病気が癒えるという「なで薬師」もあります。